米国法人所有商標権譲渡にかかる課税関係|  株式会社マース・タックスコンサルティング


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米国法人所有商標権譲渡にかかる課税関係

Q.質問

  • 1. 当社は東京に本社を置く衣料メーカーですが、以前より米国法人からある有名なブランドの使用許諾を受けておりました。今般、先方の資金繰りの都合でこのブランドについて日本における商標権及び商号権(以下これらを総称して単に「商標権等」という)を購入しないかとの提案があり約10億円で金額的に合意に達しました。
  • 2. 譲渡契約書において全世界的なブランドイメージを確保する為、一定の品質維持条項、乱売禁止条項や当社が将来、商標権等を転売する場合には米国法人がその時点で転売先が合意した価額による先買権を有することが規定されています。
  • 3. ところでこの商標権等購入の対価を支払う際に将来使用料の前払いとして日米租税条約第14条(使用料)により10%の税率で所得税の源泉徴収が必要であると当社は考えていますが、米国法人から日米租税条約第16条(譲渡収益)の適用を受けて源泉徴収は不要であるとの申し出がされています。恐れ入りますが、どちらの見解が正しいか至急ご教示ください。

A.回答

  • 1. 日米条約が適用される場合に第14条と第16条のいずれが適用されるかは実務においてよく紛争の種になる。というのも使用料条項については第3項(b)の解釈が日米の課税当局で異なる為であり、譲渡収益条項については日本側に資本資産という用語の定義が存在せず米国税法よりの借用概念であることと譲渡の意義の解釈がやや異なることが挙げられる。
  • 2. 商標権等は各国で所定の登録を行うことにより成立するものであり、国毎の商標権等の所有権を譲渡することは商法上可能と言われている。
  • 3. 本件の商標権等は米国歳入法第1221条に規定する資本資産に該当すると考える。資本資産とは概ね棚卸資産、減価償却資産、自らが創出した著作権、営業債権、政府刊行物、金融派生商品、ヘッジ取引用商品、消耗品以外の資産を言うとされている。
  • 4. 米国において商標権等を譲渡する場合には譲渡者が譲渡資産にかかる重要な権限、権利、又は継続的な持分を有しない限り資本資産の譲渡として取り扱っている。
  • 5. 日本において譲渡とは真正な、かついかなる権利をも譲渡人に残さない取引をいうという見解がある(逐条研究日米租税条約第3版小松芳明氏著p175参照)。
  • 6. 本件においては、質問の2に記載するように譲渡人側が一定の権利を留保しているようにも見えるが、他国の商標権等の所有者に迷惑をかけない為に節度ある行為を求める趣旨の規定であり、国毎に成立した商標権及び商号権の完全な所有権を譲渡する取引であると考える。. 但し、譲渡契約書と別に買戻し特約が成立しているため使用料の前払い取引であると認められる場合や、真正な譲渡と認められない諸般の事情があれば使用料条項が適用されることもあるので注意されたい。

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