フランス法人株式を現物出資した場合における租税条約上の問題点|  株式会社マース・タックスコンサルティング


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フランス法人株式を現物出資した場合における租税条約上の問題点

Q.質問

 当社はフランスに100%出資の子会社を所有しておりましたが、英国にヨーロッパ統括法人を設立し、他のヨーロッパ所在法人の株式と共に我が国法人税法51条の規定の適用を受けて圧縮記帳を行い、結果的に非課税で現物出資を行いました。

 この場合、日仏租税条約の適用を受けて現地で非課税の適用を受けられると考えますが、如何でしょうか。

A.回答

1. フランスにおける課税関係

  •  フランス国内法によると、5年以上保有し且つ特定の条件を満足する株式にかかる長期譲渡益については20.9%の税率(付加税含む)で、条件を満足しない長期譲渡益については23.75%の税率で課税されることとされています。

2. 日仏租税条約上の取り扱い

  •  日仏租税条約第13条パラグラフ2(b)の規定によりますと、一方の締約国(この場合には日本)の居住者である法人が企業の組織再編に関連して他方の締約国(この場合にはフランス所在法人の株式を譲渡した場合に、当該一方の締約国の権限ある当局(この場合には国税庁国際業務課)が当該組織再編にかかる譲渡に関し、当該締約国(同じく日本)の税法上課税の繰り延べが当該居住者に認められることを証明する証明書を発行するときは他方の締約国(同じくフランス)において課税されないと規定しています。
  •  ところで、条約で言う組織再編という用語の解釈ですが、大蔵省主税局国際租税課及び国税庁の見解では平成7年の法人税法が適用されている事業年度以前において我が国法人税法には組織再編を規定する条文は存在しないという解釈を行い、日本とフランスの条約改定担当者が平成7年の条約改定時に確認しております。本条項は元々フランス側の要望に従って挿入されたものですが、結果的にフランス側にのみ適用される片務的条項となっております。
  • 非公式ですが、平成10年の税制改正において法人税法第51条が部分的に改正されたこと、株式交換に関する非課税規定が導入されたこと、及び将来的にも会社分割に関する非課税規定の導入が予想されることを踏まえ、平成10年度の法人税法適用事業年度以後、日本にも組織再編に関する規定が存在することを両国大蔵省レベルで確認する動きがあると聞いています。
  •  従って、御社の場合は、どの年度の法人税法が適用されているかによって課税関係が異なりますので、所轄の課税当局とよくご相談の上、証明書を入手ください。

3. 日本における取り扱い

  •  仮に、前述の理由により、本件取引につき租税条約の適用がない場合にはフランスで譲渡益に対する課税が行われることとなりますが、その場合の納付税額は法人税法上の外国法人税(法人税法施行令第141条)に該当し、外国税額控除の控除限度枠がある限りにおいて外国税額控除の対象となります。
  •  但し、本件取引において国外所得にかかる収入(株式譲渡収入)と費用(株式譲渡原価及び圧縮記帳繰入損失)が同額であり国外所得が生じていないことにご注意ください。

(国際税制研究第3号掲載)LinkIcon戻る