カナダにおける会社分割とわが国における課税関係
Ⅰ.事実関係
- 1. 当社は静岡県に本社を有する内国法人ですが、カナダ法人A社の発行済み株式の三分の一を設立時より所有しています。残りはカナダに居住しているX氏とY氏がそれぞれ三分の一ずつ所有しています。A社の資本金は10万CANドルですが、経営が順調で帳簿上の純資産は1,500万CANドルに達しています。
- 2. この度、Y氏から弊社製品ラインと他社商品ラインの事業を分離して新たな事業展開を行うために、以下の手順で会社分割を行いたいと言う提案がなされました。
- a. 当社及びX氏が所有しているA社株式を有償減資し、時価純資産の三分の一に相当する営業上の資産・負債を両株主に分配する。
- b. 当社及びX氏は新カナダ法人B社を設立し、A社より分配された営業上の資産・負債の全額をB社に直ちに現物出資し、共にB社の50%株主になる。
- c. 当社及びX氏所有株式は全て償却されるため、Y氏はA社の100%株主になる。
- d. この一連の取引において、カナダの税法上、当社及びX氏は事業再編成にかかる会社分割として非課税の取り扱いを受けることができる。
Ⅱ.質問
- この一連の取引につき、わが国において当社はどのような課税を受けるのでしょうか。
Ⅲ.回答
- 1. この一連の取引において貴社がA社株式につき有償減資されるときに、一株当たり帳簿価額と一株当たり資本等の額のいずれか大きい額を超えてなされた金銭等の分配額はみなし配当に該当します(法法24条1項1号)。設立時出資額とA社資本金等の持分相当額が等しいと仮定するとみなし配当の額は496.7万CANドルの円価相当額(ただし、各取引時の為替レートを使用する必要があります)となり、同額を益金に参入しなければなりません。一方、外国法人からの配当については受け取り配当益金不参入の規定の適用はありませんが(法法23条括弧書き参照)、配当にかかる源泉税について直接外国税額控除、A社がカナダで納付した法人所得税につき間接外国税額控除の適用があるとされています(法基通16-3-35)。その結果、外国税額控除の枠が十分にあると仮定すれば、カナダの実行税率と日本における実行税率の差に相当する税額を日本で納付することとなります。
- 2. ところで、貴社はA社株式減資時にその営業にかかる資産・負債の分配を受けたとされていますが、現実にはその資産・負債を実際に手にすることもなく、それらは直ちにその全額をB社に現物出資されています。その結果、貴社はA社株式に替えてB社株式を取得します。この一連の取引はカナダにおける会社分割手続きであり、会社の事業再編成として非課税の取り扱いを受けています。わが国において、会社分割にかかる規定は商法及び税法上いまだ立法されていませんが、当年度中にまず商法から導入される予定です。筆者の経験では、上記のような取引が行われた場合に身代わり株式を受領しても課税適状にないと主張して簿価引継ぎを条件として非課税の取り扱いを受けたことがありますので、貴社においても所轄の税務当局と御相談されることをお勧めします。
(国際税制研究第4号掲載)戻る