海外子会社の市場開拓費を親会社が負担する場合の課税関係
Ⅰ.事実関係
- 1. 弊社は福岡市に本社を置く化学品メーカーですが、シンガポールに100%所有の販売子会社を設立し、弊社の製品を販売させることとしました。
- 2. ところで、設立後一定期間は十分な販売量が見込めないため、当該子会社の財政状態は相当悪化するものと見込まれます。
- 3. そこで子会社がシンガポール及び周辺国において行う市場開拓活動は、製造会社たる親会社にもその効果が及ぶものであることから、子会社の市場開拓活動に関連する販売費の内、相当の費用負担を行いたいと考えています。
Ⅱ.質問
- 弊社が負担する子会社の販売費は我国法人税の課税所得の計算上、損金になるでしょうか。
Ⅲ.回答
- 親会社に効果が及ぶものの基準を明確にし、親会社が子会社に支払う市場開拓活動の対価が合理的に算出されている場合には損金になると考えます。
Ⅳ.検討
- 1. 貴社が子会社支援のために、特定の経費科目に形を変えて子会社に経済的な支援を行うことは、移転価格税制上の寄付金に該当するから損金になりません。
- 2. ところで、貴社が市場開拓活動の費用分担を行うことは、貴社が間接的に市場開拓活動に参加することであり、子会社への売上の増大という形で貴社の売上が増加することとなり、費用の支出の効果が貴社に帰属することとなり、対価性が認められます。
- 3. この場合、市場開拓活動とは例えば次のようなものを言います。
- a. 貴社ブランドの広告宣伝活動
- b. 貴社が取り扱う製品・商品の説明会の実施
- c. 貴社が取り扱う製品・商品の使用に関する技術指導及び援助
- d. 貴社が新規に取り扱う製品・商品のPR活動
- e. その他貴社と連携して行う市場開拓活動
- 4. 負担すべき費用については、貴社及び子会社にその支出の効果が及ぶ基準を明確にし、その基準を基礎としたフルコストカバー方式によることが合理的と考えます。子会社は市場開拓の支援を主たる事業とする法人ではありませんので、その要した経費に対し一定の利益を請求することはできませんが、子会社の人件費、間接諸経費まで対象にすることができます。
- 5. このため、子会社に対しその対価の支払いを行うにあたっては、広告宣伝等の役務が具体的に提供され、かつ、これに要した費用が個別具体的に把握される必要があると共に、貴社が負担することとなる費用の支出を客観的に証明するために証憑を添えることも必要になるのではないかと考えます。
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