米国法人との間でライセンス契約を締結する場合の課税関係(2)
Ⅰ.事実関係
- 前号と同じ事実関係ですが、以下の質問において一部訂正します。
Ⅱ.質問
- 1. 弊社が米国で製品Yを販売する場合に、弊社の米国子会社を用いる場合と米国支店を用いる場合に課税関係に違いはありますか。
- 2. X社の特許権が日本においても有効に成立し、かつ、ライセンス契約中、前号の事実関係4-①に代えて「当該特許権を用いて製品Yを製造及び販売することを許諾する」と規定されていた場合に課税関係に違いはありますか。
Ⅲ.回答
- 1. 子会社が販売する場合には本件使用料の最終負担者は子会社となりますから、貴社がX社に使用料を支払った後、(場合によっては貴社の利益を上乗せの上)当該額につき貴社が子会社に請求すべきという移転価格税制上の問題があります。
- 2. X社の特許が日米両国で成立している場合には、製造にかかる特許権の使用の対価は製造が日本国内で行われる限り日本国内源泉所得であり、販売にかかる特許権の使用の対価は米国内で行われる限り日本国外源泉所得であるという議論があります。両者を適切に区分できる場合には、前者は10%の税率で源泉徴収の対象となります。
Ⅳ.検討
- 1. 米国子会社を用いて製品Yを販売する場合には、本件特許権にかかる法的関係は、X社がライセンサー、貴社がライセンシー、貴社米国子会社がサブライセンシーとなります。貴社が米国販売子会社を通じて製品Yを米国内で販売する場合には、特許権の直接の利用者は当該子会社であり、特許権使用にかかる販売収入が子会社に帰属する限り特許権使用に伴う費用も子会社が負担すべきということになります。
- 2. 従って、正当な理由無く、貴社が当該子会社に適切な額の使用料の請求を行っていない場合には移転価格税制上の問題(又は国外関連者に対する寄付金問題)が生じます。
- 3. 日米両国において特許権が成立している場合には、製造に関連して使用する特許権の使用地は日本国内であり、その使用料の所得源泉地は日本国内にあるといえます。一方、販売に関連して使用する特許権の使用地は米国内であり、その使用料の所得源泉地は米国内にあるといえます。
- 4. 我が国の所得源泉に関する規定において、日本国内で製造し、国外で販売する場合には、製造利益と販売利益に区分し、製造利益は国内源泉所得であると規定しています(法令176①二及び所令279①二)。
- 5. 上記の考え方を本件に適用すれば、所得税の源泉徴収についても、使用料を国内源泉所得と国外源泉所得に区分し、前者について10%(租税条約にかかる適切な届け出がある場合)又は20%の税率で貴社が源泉徴収すべきという考え方が成立すると思われます。但し、ライセンス契約書において製造に関する使用料と販売に関する使用料の料率が区分されていない場合にはどのように分配するかという問題がありますが、法基通20-1-3に準じた考え方で対処すべきと考えます。
戻る