日本の資本主義に欠けているもの
Q.お早うございます。今日はどんなお話を聞かせて戴けるのですか。
A. 日本の経済は今、非常に困難な時期にありますよね。
なぜこれだけ悪くなったのかその理由を考えてみたいと思います。
Q. また、とても難しそうなお話ですね。それで先生はどのようにお考えですか。
A. この問題は色々な問題を含んでいるので少し的を絞る必要があります。
そこで特に日本と欧米の落差が大きいといわれる金融の世界を例に取ってみましょう。
Q. 少し興味がわいてきましたが、どんなお話になるのでしょう。
A. 仕事柄、日本と外資系の金融機関の方と接する機会があるので両者の比較ということになります。
一言でいえば、日本の金融機関はもっているノウハウに欠けるところがあります。
Q. それはどういうものでしょうか。
A. いわゆるプライベートバンクの方とお話をするとよく分かるのですが、資産運用を10年、20年の単位で考えられている方が日本にはほとんどおられません。
つまり、サラリーマンの運用担当者はいても、長期資産運用ができる専門家がいないということです。
その結果として予定利率を確保できない保険、年金会社の破綻ということになります。
一生涯の運用利回りを競う専門家集団があっても良いはずですが、日本にはいないと思います。
Q. なるほど、他にはどんなものがありますか。
A. お宝探偵団ではありませんが、ビジネスの世界でものの価値が測定できる目利きが本当に少ないです。
典型的な話として、ベンチャー事業における新規事業価値が合理的に測定できれば新規事業にお金が回って、新たな事業が立ち上がる可能性が強くなります。
その結果、日本の産業が復活するスピードが速まるのですが、現実は事業価値が分からないということで投資する人が少ないのが実状です。
Q. もう一つだけ例を挙げてもらえますか。
A. 失敗する可能性、又は損失を被る可能性をリスクといいますが、リスクを合理的に測定できる人がいません。
日本では自動車保険とか火災保険とか統計的に資料が調っている分野はともかく、そうでない分野において損害保険を自由自在に設計して個別に販売できる損害保険会社がありません。
事業で失敗するとか、不足の損害を被ることはよくあることですが、このリスク測定がうまくできないと円滑な事業経営はできません。
但し、最近はリスクマネジメントという分野があるということは認知されているので、今後専門家が誕生する可能性はあります。
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